【2018年度】インドネシアの最低賃金連続上昇は良策なのか

開けましておめでとうございます。加藤です。今年も楽しく好き勝手に書いていくので楽しくやっていきましょう。

新年一発目の今回は今年度のインドネシアの最低賃金について。相変わらず軒並み上がってているんですが、それって本当に効果があるのかな?について。




ほとんどの地域で昨年度から8.71%増

まずは2018年度の最低賃金の比較から。

オレンジがジャカルタ近郊の日系企業が集中しているエリア。青はオレンジ程は多くないけど日本人が働いているジャカルタ以外のジャワ島やバリなどです。


ジャカルタを中心にして、ブカシ、カラワン、スラバヤ等の日系工場が集中するエリアはかなり給与が高めに設定されていますね。

それと比べると西、東、中部ジャワ州やジョグジャ地域はかなり給与が低めです。

バリは多少は高めですが、観光以外の産業がそこまで発展していないからか、そこまで高く設定されていません。(バリ島は外国人が居ついてしまうのを防ぐため、あえて給料を下げているという話もあります。)



インドネシアの最低賃金はこうして決まる

ジャカルタの最低賃金の決め方ですが、ジェトロの報告書では以下のように書かれています。

インドネシアの最低賃金は州ごとに設定され、毎年1月1日に改定される。州によっては、そこから県・市レベル、さらには業種別分類で、県知事、市長がそれぞれの水準を決定している(業種の種類は、各地域の主要産業によって異なる)。各州は11月1日までに、県・市は11月21日までに決定・発表することが義務付けられており、2017年分については、11月28日までに全国34州の最低賃金が確定した。以上、インドネシア最新労務事情より抜粋


というわけで、国が一律で決めているわけではないとのこと。下は2011年から2018年(予想)までの最低賃金の上昇率をグラフにしたのがコチラです。

2011年→2012年は18.5%でしたが、その次の年は一気に43.9%に上がっています。これは異常な上がり方ですが、たぶんですが2011年度自動車業界の売り上げが爆発的に伸びた時期でして、その結果としてこれだけ最低賃金が伸びたのではないかと。

インドネシアの自動車業界の状況はコチラ


それ以降は上昇率はちょっとずつ下がっていきますが、賃金そのものが下がっているわけではなく、"上昇率"が下がっているだけ。どちらにせよ賃金自体は毎年上がってますから。来年だって8.71%も上がりますからね。やってられません。

ちなみに意外と知られていませんが、日本の最低賃金も下がったことはなく、むしろ毎年上がってるんですよね。



最低賃金上昇は悪

インドネシアで最低賃金が上がるのはもうしょうがない。じゃあせめてその賃金上昇で国民に恩恵はあるのかというとそうでもないと言う話です。

ほかの国ではいい例もあるとは思いますが、ことインドネシアに関してはあまり得をしている人はいないように思われます。


➤中小企業の経営を圧迫

最低賃金の上昇は人件費に直結します。そして中小企業にとって予算を大きく占めるのも人件費。企業としては賃金が毎年上がるとわかっているとなかなか増員の決定を出せないんですね。


そのくせ企業の拡大には営業力と採用が欠かせないので、この板挟みほど辛いものはありませんね。

最悪の場合、ローカルなら倒産、外資なら撤退です。


➤失業者が増加

人件費が上がっても企業の保有しているお金の量はが増えるわけではありません。予算も好成績でなければそんなに簡単には増えませんし。


逆にやることと利益が同じなのに人件費が上がるということは単純な赤字。そうしたら真っ先に切られるのが末端のスタッフたち。

そう、自分の首を自分で占めるかのごとく!(あくまで給料あげたのは自分の意思ではなくて国の意思なんですが。)


スタッフからしたら給料が上がるかと思ったらクビ切られるとか最悪な結末です。でも本当にある話で、最近日系企業のお客さんの間でも、撤退するつもりはないし利益も出ているけど、採用はストップしたいとか、むしろ人減らし中という話はたまに出ます。


➤格差は縮まらない

最低賃金上昇の目的はやはり給与格差の是正です。でもその給与格差が縮まらないんです。

なぜかというと、以下の2つの原因があります。


1)そもそもその最低賃金が守られていないから

最低賃金を守るのは外資系では当たり前ですが(監査がありますから)、それ以外ではまだ守られていない企業もたくさんあります。


とくに新卒や警備員、オフィスボーイ(小間使い的なポジション)などはいまだに給与が悪く、最低賃金が守られていないケースが多々あります。

その人たちは結局最低賃金の概念が適用されていない(本来はされるべきなのですが)ので変わらずです。


また、国民の大多数を占めている農民やワルンやカキリマ(個人の小規模商店や移動式屋台)や物売りなどは個人事業主なので当然ここに含まれません。


2)他の人も給与上昇してしまうから

もし最低賃金を守られたとしても格差が縮まらない理由は他の人も給与が上がってしまうからです。


例えば最低賃金が350万ルピア(日本円で約3万円)な地域があったとして、次の年に370万ルピアになったとします。そうすると最低給与だったAさんは嬉しいですが、元々370万ルピアもらってたBさんはいい顔しないですよね。


「なんで1年務めた俺の給与が新人と同じなんだ!俺の給料もあげろ!」ってなるわけです。まー分からんでもないってなってBさんの給料も仕方なく上げたとします。


そうするとBさんと同じ給料になっちゃう人もいるからその人も「じゃあ俺も上げてくれよ!」ってなるわけで、みんながそれを繰り返せば決して差は埋まらずただのベアでしかありません。


ちなみにベアは国際競争において競争力の低下を招くとも言われていて、特に製造業はこの影響をモロにウケると言われています。

インドネシアの主要産業は農林水産業と製造業で40%を超える輸出メインの国なので、ベアがあると輸出価格に反映されてあまりいいことはないはず…。輸入する側や自国で完結できるならいいかもしれませんが、今のインドネシアにはあまり恩恵が感じられませんね。

知識のない国民からの票集めの役には立つかもしれませんが、長期的な意味では得策ではないと思っています。




いかがでしたでしょうか?

インドネシアは先進国と比べたらまだまだ足りないことだらけで問題も多い国です

そこはデメリットのように見えますが、見方を変えれば先進国が既にやったことで効果のあるからインドネシアに合うことことだけ選べばいいんです。


とりあえず他国で成功したからパクろうぜ!ではなくて、その施策の本質をパクるとか、他国では失敗したけどインドネシアでは成功するはず!というものを探して頑張ってほしいものですね。

少なくとも最低賃金の大幅アップはそろそろやめーや。笑



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Sampai jumpa! サンパイジュンパ!(ではまた!) 


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